政治資金の透明化へ一歩前進した。まだ道半ばである。与野党の協力でさらなる改革を成し遂げてほしい。 政治資金規正法の再改正など、政治改革関連の3法が臨時国会で成立した。 再改正する経緯を振り返ると、やはり少数与党の国会になった影響が大きい。 発端は自民党派閥の裏金事件だが、自民、公明の両与党による6月の規正法改正はあまりに甘い内容だった。 10月の衆院選で国民の厳しい審判を受け、与党が過半数を割ってもなお、自民は抜け道を残そうとした。石破茂首相が「年内に結論を示す」と期限を明確にし、最後は野党案をのむ形となった。 政党が政治家個人に支給する政策活動費の廃止は、野党7党の案に自公が賛成して決まった。かつて自民は幹事長らに年十数億円程度を渡しており、使途の公開義務がない不透明なカネの象徴だ。 自民は外交上の秘密やプライバシー保護を理由に、支出先を非公開にできる「例外」の創設にこだわった。「新たなブラックボックスだ」と野党の批判を浴び、撤回したのは当然の帰結である。 政治資金をチェックする第三者機関の設置も決まった。政策活動費の例外のみを監査対象とした自民案でなく、国会議員の政治団体に目を光らせる国民民主、公明両党の法案が成立した。 第三者機関は国会に設置される。不正を防ぐ実効力のある体制が課題となる。 政治資金収支報告書のデータベース化、外国人による政治資金パーティー券購入禁止を定めた自民案も成立した。 国会議員に月額100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)は、ようやく使途公開と残金の国庫返納にこぎ着けた。 2021年の衆院選後、初当選した議員が在職1日で満額支給されたことを問題提起し、日割り支給に改まった。使途公開などには自民が消極的で、棚上げされていた。 今後の制度設計で支出を認める範囲、公開方法を厳格に規定しなくてはならない。 先送りされたのは企業・団体献金の扱いだ。来年3月末までに結論を出すという。 立憲民主党の野田佳彦代表らが「改革の本丸」と訴えるように、複数の野党が禁止を求める。多額の企業・団体献金を受けている自民は存続を主張して譲らない。 企業・団体献金は政策をゆがめる恐れがあると、長らく指摘されてきた。来年1月からの通常国会では禁止の方向で決着すべきだ。 政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるように、政治資金の流れを透明化するのが規正法の目的だ。その原点を何度も確かめたい。 政治に対する国民の信頼を取り戻すため、政治とカネに関するルールを厳しくするのは当たり前のことだ。与野党で努力すべきことはまだたくさんある。
西日本新聞