りらいぶ 佐々木貴史社長(1)20歳が起業家としての原点|語り部の経営者たち

公開日:2024/12/23 17:00 更新日:2024/12/23 17:00

りらいぶの佐々木貴史社長(C)日刊ゲンダイ

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体がカチコチのタレント、出川哲朗(60歳)。彼が一枚のシャツを着ただけで、体が一気に柔らかくなり、本人も「なんで」と驚いているテレビCMを、恐らく誰もが一度は見ているはずだ。 そしてこのCMを見た人のほとんどが「そんなバカな。リアルガチタレントのはずの出川もお金で転ぶのか」と思ったに違いない。 「シャツ一枚で体が柔らかくなるはずがない」

それが常識的な判断だろう。ところが実際にシャツを着ると、柔軟性が増すだけでなく力も入るようになる。例えば介護をする時、このシャツを着るだけで体を持ち上げるなどの作業がすごく楽になるという、何とも不思議なシャツだ。

このシャツを開発したのが、仙台市に本社を置く株式会社りらいぶ。シャツやスパッツ、帽子などを「リライブ」ブランドで販売している。 りらいぶは、2017年に設立されたベンチャー企業(当時の社名は身体機能研究所)といっても、創業者で社長の佐々木貴史氏は現在63歳。遅咲きのベンチャー起業家だが、りらいぶの前にも、いくつもの企業を立ち上げてきた。

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りらいぶの佐々木貴史社長(C)日刊ゲンダイ

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生まれは福島県郡山市だが、国鉄職員だった父の転勤で引っ越しを繰り返した。幼い頃は病弱で学校も休みがち。高校も出席日数ぎりぎりで卒業した。そんな体調のため進学もできず、療養しながら、国鉄を辞めて独立した父の事業を手伝うしかなかった。しかし、その事業もうまくいっておらず、窮乏生活が続いていた。 「その頃の僕には夢も希望もなかった」 そんな佐々木氏だったが、神様はひとつだけプレゼントをくれた。それが、一人で学ぶ能力だった。 学校にもあまり行けなかったため友人もいない。そんな佐々木氏の遊び道具が将棋だった。もちろん、相手はいない。しかし、独学で将棋を学ぶうちに棋力は上がり、アマチュア3段を取るまでになった。そしてこの能力は、その後も存分に発揮されることになる。 起業家としての原点は20歳の時に遡る。父の手伝いのついでに上京した佐々木氏は秋葉原の電気街で、黎明期のパソコンに出合う。パソコンを使った仕事なら病弱でも、そして一人でもできる、そうすれば今の生活から脱却できる、と考えた佐々木氏はなけなしのお金をはたき、8万円で中古パソコンを購入する。

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りらいぶの佐々木貴史社長(C)日刊ゲンダイ

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「将棋とコンピューターのプログラミングは思考方法が似ている」と佐々木氏は言う。その技術も将棋同様、独学で学び、2年後には「情報処理2種」の国家資格を取得するまでになる。この資格をひっさげ、池袋のコンピューター会社に就職。先行きの見えない生活からようやく脱却できることになった。

コンピューター会社ですぐに佐々木氏は頼られる存在になる。勉強もさらに続け、1種資格も取得した。そうすると、ますます仕事が増えていく。コンピューターなら病弱でも仕事ができると考えていたが、実際にはコンピューターによって健康が蝕まれていった。

やむなく佐々木氏は1986年、25歳の時に実家のある仙台に帰郷した。 「幸いだったのは、元の会社が下請けとして使ってくれたこと」

こうして独立した佐々木氏だが、その後、徐々に仕事が増えたため、88年に社員を雇って有限会社を設立した。起業のスタートだった。 (つづく)

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